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【教えて!Dr.】 どうしても眠れないのはむずむず脚症候群のせいかも?第1回

第1回「主な原因や症状について」

脚の不快感から睡眠障害を引き起こす「むずむず脚症候群」。現在、患者数は人口の4%、潜在患者は10%以上いると言われています。そこで、むずむず脚症候群の専門外来がある、にわファミリークリニック院長の丹羽潔先生による詳しい解説を、2回連載でお届けします。第1回のテーマは、「主な原因や症状について」です。

女性は男性の1.5倍。40歳以上に多い

 

──むずむず脚症候群とは、どのような病気ですか?

「むずむず脚症候群」は俗称で、正式名は、「下肢静止不能症候群(ストレスレッグス症候群)」と言います。じっと座っているときや寝るときに、脚に不快感を感じる、脚を動かしたくてたまらなくなる、という耐え難い運動欲求が生じる感覚障害です。

 

──むずむず脚症候群について、最近の傾向を教えてください。

男女比でみると、1:1.5くらいの割合で、女性に多い傾向があります。40歳以上に多く発症し、ピークは60~70歳です。

 

──むずむず脚症候群の主な原因は何ですか?

はっきりとはわかっていませんが、遺伝性、ドーパミンの調節障害などが関係していると言われている一次性(特発性)と、鉄の欠乏(または代謝異常)、腎不全、末梢神経障害薬剤性(抗うつ薬、向精神薬の服用)などの病気や体の変化により起こる二次性の2つに大きくわけることができます。

最近は子どもの患者さんが多いのですが、両親のどちらかがむずむず脚症候群の既往歴があると、8割子どもに遺伝発症するという報告があります。

##ふくらはぎに症状が出やすく、さらに「どうしても眠れない」

──代表的な症状は?

脚の表面や奥の方に、不快感があります。患者さんによって、その表現法はさまざまです。

・むずむずする

・チクチクする

・ほてる

・電流が流れているよう

・かきりむしりたくなる

・虫がはっているよう

・足が笑う

・そわそわする

など。

脚の中でも、ふくらはぎに症状が出ることが多いです。その他、足裏、足の指に出るという訴えも少なくありません。日中よりも夕方や夜に起こることが多く、また、脚を動かすと楽になるという特徴があります。

──脚以外にも、「こんな不都合が起こる」ということは?

手や腹部にも不快感が出現する事もあります。夜に、布団に入ってから脚の不快感があるため、「どうしても眠れない」となることが。

やっと寝つくことができても、何度も寝返りを打ちながら脚を動かしたり、無意識のうちに脚がピクピクと周期的に動く「周期性四肢運動障害」をともなうことも多く、「熟睡感がない」「寝てもすぐ目が覚めてしまう」「どうしても眠れない」という状態が続き、睡眠の質は悪くなる一方です。

──睡眠と関わりが深いのですね。

睡眠が十分にとれなければ、日中は眠気に襲われる、前日の疲れがとれないといったことにつながり、日常生活にさまざまな支障をきたします。

──夜だけでなく、昼に悪影響はありますか?

会社のデスクに座っているときや電車で移動中など、動けないときに脚がむずむずして、仕事に集中できないなどの妨げになることも。夜も昼もこんな状態が続けば、精神的に追い詰められ、不安になったり抑うつ的になったりすることも珍しくありません。

2010年に治療薬が保険適用になり、認知が広がり始める

──そこまで日常生活が深刻になることがあるのに、この病気はあまり認知されていない気がします。

2010年にプラミペキソールというドーパミン受容体作動薬がやっと保険適用になったくらいで、それまではなかなか認知されていませんでした。

典型的な例として、「脚がむずむずする不快感」ではなく、「どうしても眠れない」という訴えで、患者さんは内科へ相談し、原因がわからず「精神的な原因から眠れないのだろう」と精神科へ回され、挙句に睡眠薬を処方されてしまうケースが。

「脚がむずむずする不快感」という根本的な原因が改善されていないので、「どうしても眠れない」という状態も何ら解決せずに長年悩む人が多くいました。

──現在の認知度はどれくらいでしょうか?

詳しく知っている人は多くないものの、「むずむず脚症候群」という言葉は広く認知されているように感じます。当クリニックにも、月2~3人は初診の患者さんがいらっしゃいます。

受診は、睡眠の専門医、精神科、脳神経内科へ

──むずむず脚症候群を放っておくと、どのようなことが起こりますか?

線維筋痛症や片頭痛を合併しやすい傾向が。また、パーキンソン病に合併することは極めて多く、30%くらいに見られるという報告があります。

 

──自然に完治することはないのでしょうか?

一度発症すると、症状がまったくなくなることはありません。花粉症と同じように考えてください。ひどいときは、医師による治療を施しながら症状を軽減させて。日常でもあらゆる改善法(第2回で解説します)を試しながら、上手く付き合っていくのがよいのです。

 

──病院を受診する時期の目安は? 

不眠が続いて、日常生活に支障が出たら受診を。睡眠の専門医、精神科、脳神経内科が適しています。専門外来としてむずむず脚外来を開設している病院もあります。

 

ホームページの問い合わせメールや電話などで、事前に「どうしても眠れない。むずむず脚症候群かもしれないのですが、検査はできますか?」と確認してから足を運ぶようにするとスムーズです。

第2回は、「主な治療法と日常生活でできる改善法」について解説します。

文/内藤綾子

監修:にわファミリークリニック 丹羽 潔(にわ きよし)院長

昭和62年に東海大学医学部卒業。ドイツ Ludwig-Maximillian 大学神経内科留学、東海大学医学部内科助手、平塚市民病院神経内科医長、アメリカ Minnesota 大学神経内科留学、東海大学医学部内科講師、同付属八王子病院神経内科医長、東海大学医学部付属東京病院神経内科医長などを経て、平成17年にわファミリークリニック院長に。にわファミリークリニックには、「むずむず脚外来」があり、患者さんの訴えに親身に耳を傾け、的確な診察と治療に定評がある。