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【教えて!Dr.】どうしても眠れないのはむずむず脚症候群のせいかも?第2回

【教えて!Dr.】

どうしても眠れないのはむずむず脚症候群のせいかも?

第2回「主な治療法と日常生活でできる改善法」

脚の不快感から睡眠障害を引き起こす「むずむず脚症候群」。現在、患者数は人口の4%、潜在患者は10%以上いると言われています。そこで、むずむず脚症候群の専門外来がある、にわファミリークリニック院長の丹羽潔先生の話を、2回連載でお届けします。第1回は「主な原因と症状について」を解説しました。第2回のテーマは、「主な治療法と日常生活でできる改善法」です。

4つの診断基準に基づいて、病気が確定

──むずむず脚症候群の診断について、教えてください。

「あなたは、むずむず脚症候群です」と医師が診断するには、4つの診断基準があります。

 

1.脚の不快な感覚と、それに伴う「脚を動かしたい」という強い欲求がある。

  1. 脚の不快な感覚が、じっと座っていたり、静かに横になったりしている状態で始まる、あるいは強くなる。
  2. 脚の不快な感覚が、運動によって軽くなる、または消える。
  3. 脚の不快な感覚が、日中より夕方や夜間に強くなる。

 

4つとも、すべて当てはまる場合に確定されます。

──診断がついたあと、どのような検査を行うのでしょう?

代表的な検査は、次の通りです。

 

・問診

4つの診断基準を確認するため、具体的な症状や「どうしても眠れない」といった睡眠状態を聞きます。家族歴による遺伝の有無や既往歴によるほかの病気との鑑別、合併症の確認も行います。

 

・血液検査

むずむず脚症候群は鉄代謝と関係が深いため、血清鉄(Fe)、TIBC(総鉄結合能)、フェリチン(貯蔵鉄)などの数値をチェックし、鉄分の状態を把握。腎障害、尿毒症などの有無もチェックします。

終夜睡眠ポリグラフ検査

脚の不快感から「どうしても眠れない」という人が多いので、睡眠中の脳波や眼球、筋肉の動きなどを計測し、睡眠の深さや持続時間を確認。就寝中に無意識に足関節が動く周期性四肢運動の判定にも役立ちます。終夜睡眠ポリグラフ検査は、必要と判断された患者さんが、一泊入院して受けます。

日常生活の工夫で症状を緩和させ、「どうしても眠れない」を解決!

──診断されたあと、日常生活で気をつけることは?

症状が軽い場合には、日常生活の工夫によって悪化を防ぎ、症状を改善させることが可能に。「どうしても眠れない」といった状態を解決することができます

・飲酒・喫煙・カフェイン飲料はなるべく控える

アルコールや、タバコに含まれるニコチン、コーヒーやウーロン茶などに含まれるカフェインは、症状を悪化させる要因に。特にカフェインは鉄分の吸収を妨げる傾向があるため、できるだけ控えましょう。

・軽い運動をする

軽い運動で適度に筋肉を動かすと、9割の患者さんの症状が軽くなるという報告があります。ウォーキング、自転車に乗る、ジョギングなどを10~30分程度行うことを習慣づけて。ジムに寄って徹底的に汗を流したり、ダンベルを上げたりなどといったハードな運動は、逆効果になるので注意します。

・マッサージをする

脚に適度な刺激を与えるのは、症状改善に有効です。症状が出やすい部位を丁寧にほぐしてあげましょう。

・温度と湿度に気を配る

寝室の温度が16~26℃、湿度が50~60%くらいの環境だと、快適に過ごせます。あまり暑くてジメジメしていると、症状が出やすい傾向が。布団の中では汗をかきやすいので、吸湿性の高い綿素材などのパジャマを着ることが〇。

・保湿クリームで脚のケアを

肌が乾燥すると、特にトラブルのない肌でもかゆくなりがちです。かゆみに伴って症状が出ることが多いので、保湿クリームで脚のケアをしましょう。

・鉄分の補給できる食事

食品に含まれる鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄にわけられます。消化吸収されやすいヘム鉄を多く含む、鶏・豚・牛肉、内臓類、レバーペースト、かつお、いわし、まぐろなどの魚類がおすすめ。

急激な温度変化で症状を和らげる裏ワザとは?

──寝ているときに脚がむずむずしてきたら、相当睡眠が妨げられますね。

寝ていて症状が強くなったときは、急激に冷やす裏ワザがおすすめ。温度による皮膚の刺激が症状の緩和につながると言われ、特に急激な温度変化が効果的なんです。

190mlくらいのショートサイズで、コーヒーなどの缶飲料を2本凍らせます。たらいなどの入れ物に凍らせた缶飲料とタオルを入れ、ベッドわきに置いてセット完了。寝ているときに脚がむずむずしてきたら、缶の水滴をタオルで拭いて症状が出てきたところの皮膚に直接当て、コロコロ転がしましょう。患部が急激に冷えて症状が軽減されます。

この方法は、電気をつけず寝ながらできるので、目がぱっちり覚めてしまうのを防ぐこともできて手軽。当クリニックでおすすめした患者さんにも好評です。

日常生活の工夫で改善されないときは、薬物療法を

──誰でも簡単にできるところがいいですね! 一方で、薬による治療法を教えてください。

日常生活の工夫では症状が改善されず、「どうしても眠れない」となった場合は、薬による治療が必要になります。

・ドパミン受容体刺激薬

・抗てんかん薬

などが処方されます。むずむず脚症候群の治療は、通常長期にわたります。「症状がよくなってきたから、もう薬はやめよう」と、自己判断で服薬をやめないで。急にやめると、症状が悪化することがあります。

むずむず脚症候群は、よく知らないと「難しい病気なのでは」と悩みすぎてしまうことがあります。日常生活の工夫で症状を改善することができ、さらに薬による治療も行われています。症状が出て「どうしても眠れない」となったら我慢せず、気になる症状がある場合は専門医を受診してみましょう。

文/内藤綾子

監修:にわファミリークリニック 丹羽 潔(にわ きよし)院長

昭和62年に東海大学医学部卒業。ドイツ Ludwig-Maximillian 大学神経内科留学、東海大学医学部内科助手、平塚市民病院神経内科医長、アメリカ Minnesota 大学神経内科留学、東海大学医学部内科講師、同付属八王子病院神経内科医長、東海大学医学部付属東京病院神経内科医長などを経て、平成17年にわファミリークリニック院長に。にわファミリークリニックには、「むずむず脚外来」があり、患者さんの訴えに親身に耳を傾け、的確な診察と治療に定評がある。